机上の空論主義者

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WEAR SPACEとVAQSOからMake系のスタートアップについて考える

こんにちは!

今回はQiitaのAdvent Calendarで気まぐれに応募したMake関連の記事です。

Make関連の話題として、ハードウェアのスタートアップについて考えることが何度かあったので、そちらについて自分の考えを書こうと思います。


WEAR SPACE

過去のブログでも書きましたが、先月の7月あたりに手に入れたデバイスです。このデバイスなのですが、購入型のクラウドファンディングで購入したものでした。3万円です。

ume-boshi.hatenablog.jp

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視覚的・聴覚的ノイズを除去できるデバイス

2018年12月に資金集めを終了し、2019年8月の発売を予定しておりましたが、3度の延期を繰り返して2020年7月あたりにようやく発送されました。想定よりもちょっとずつ延ばされて1年近く待たされたため、少々印象が悪いです。クラウドファンディングという不安定なものに出資しておいて文句を言うのはおかしい話ですが。

ただ、Make(というよりモノづくり全般?)において注意したい点がこのスタートアップにあったと感じたので、それについて述べていきます。

買い手の心情変化

まず、個人的な心情の変化がどのようになっていたかについてです。

↓ が私の作品に対する印象の高さです。

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WEAR SPACEへの印象変化

予想通り購入時に印象の良さが最大になり、延期が繰り返されるにつれて徐々に減っていることがわかると思います。注目すべきなのは商品が届いたタイミングであり、本来購入時よりも上がるべきタイミングですら低い印象のままです。


この原因は、クラウドファンディングで購入するのはイデアとその瞬間に提示された機能に魅力を感じたから生まれていると考えています。いままで何度かクラウドファンディングで購入したことがあり、すぐ調子が悪くなったり、断線したり体に合わなかったりしましたが、全く後悔していませんでした。なぜならこれは、イデアを支援して、それがすぐに手に入る喜びがあったためなんじゃないかと考えています。

それに対しWEAR SPACEは、はじめの期待感はすごかったものの、延期期間が長くなるほどアイデアへの興味が無くなり、どうでもよくなってしまいました。また、「これだけ待たせたんだから」と機能面での期待は高くなります(例えば当然のようにType-C充電対応とか)。この2点が問題になり、デバイスを実際に受け取ったときの印象は大して上がらず、「期待外れ」と感じてしまいました。


もし、作品の質を向上させながらも信頼を獲得したければ、製作現状を詳細に報告するべきだったのではないでしょうか。企業で働いたことはないですが、いわゆる「報連相」が少なければ、どれだけ優秀だったとしても信用できません。特に、WEAR SPACEの会社は意識が高そうに見えたので、「意識高いけど何やってるかわからない」というレッテルを貼りたくなり、信頼を削ぐ結果となったのではないかと思います。

WEAR SPACEは、製作段階で多くのフィードバックを受けながら改善していっていたはずなので、「どういう意見」があり「どのアプローチで改善」していっているかを月一回でも報告してくれていたら、受け取り手の心持は大きく変化したのではないかと予想しています。




我々はどうすべきか

上記のことから、我々がスタートアップする場合には次のことに気を付ければよいと考えます。

クラウドファンディングでは、アイデアとその時点での機能を買っているから、即時性が重要です。つまり、その時に実装できうる最高の出来栄えである必要はなく、一度発売してから大量のフィードバックを受け、後の製品でバージョンアップしていけば良いのではないかと考えます。

自分がモノづくりをしているときもそうですが、どんないいアイデアだったとしても月日が経てばその魅力も薄れて見えるものです。さらに、システムの粗が見えてしまい、やる気も大きく削がれてしまいます。

また、到着後の期待値を下げないために、クラウドファンディング後の初速が大事になってきそうです。
スタートアップをしないMakerでも注意すべきことであり、大量の良いアイデアを思いついたとしても、開発しないで / 開発途中で放棄してしまうと、自分の作品にすら興味を無くし、粗ばかり見えてしまうでしょうから恐ろしいです。そのため、作り手側もなるべく初速を意識して製作することが大事そうですね。


色々悪口を言った気もしますが、良かった点も ↓ のように色々ありました!

  • 製品の質がしっかりと高い
  • 発売前に多くの対象者からフィードバックを得ていたこと
  • リコールの対応がしっかりしていた
  • 数が少なかったものの、購入者への連絡があった
  • バイス側で操作できるという利便性がある
  • プロジェクトが実商品化まで到達できた!




VAQSO

このデバイスは、自由に匂いを出力 / 停止できるようなデバイスであり、先輩が研究費用で買ったものです。アイデア自体は新しく、実用化されそうな感じはしますよね。ただそのVAQSOなんですが、日本のスタートアップ企業で、このバイスを20万円で販売した後の今、連絡がつかないそうです。具体的には、デバイスがほぼ正常に動かないため問い合わせをしたところ、3か月後に1回返事が来ただけでそれ以降は連絡がつかない状態だそうです。

本デバイスについて、研究室にインターンシップしに来た子が匂い系の作品を作りたいとのことで、私が復活を試みました。

https://vaqso.com/vr/wp-content/uploads/2018/01/VAQSO%20VR_V3_Overview_2018-01-11.013.png

技術的な問題

ここまでの情報だけでもとんでもないスタートアップですが、デバイスを分解して見て技術的にはどうだったのか考えたいと思います。

まず、公式のユーザ資料を見てみると、「おっ?」となる点がさっそく出てきます。例えば「serealport.write("");」という記述がありますが、serealじゃなくてserialが正しく、普段から組込みシステムに触れていないことが分かります。ユーザマニュアルの画像すら見れません。 このことから、あらゆる利用者にとって不親切なシステムだと判断できます。


次に、製品として動くはずの機能が思うように動作しない時点で技術力の低さがあります。

動作不良の調査のために分解したりしてみたのですが、最も大きな問題は電源が不充分であったことです。匂いデバイスとしては、ファンを1つでも動かすことが出来れば最低限の機能を満たすことができるのですが、ファンを動かした瞬間に電源が落ちてしまいマイコンからの応答が無くなります。つまり、最低限の機能も使えません
回路に問題ないか分解したりしてみたのですが断線などは見られず、回路的にも(電源以外は)問題ありませんでした。いろいろと試しているうちに、接続するPCを変更すると1つのファンまでは動作させられることがわかり、結局、目的の環境では使用できないことが判明してしまいました。外部電源での解決も試みたのですが、軽く見た限りでは上手くいきませんでした。なぜかな。

まあ、動作させるためにこうやって専門知識を必要とする時点で、製品としては論外でしょう。

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制御側の手作り感がある意味興味深い。

また、量産の面でもまだ問題がありそうだと感じました。VAQSOは本体部と制御部の2つの箇所に分かれており、制御側のケースがマルツパーツで見るようなプラスチックのケースを手で加工していました。また、手作業によるホットボンドを両箇所に多様しており、作りやすさという面が十分考慮できていないのではないかと思えます。これは別にどうでもいいか。


最後に、ハードウェア製品の特徴を把握できていないのだと思います。
ハードウェアを持つ製品は発売後に問題が生じると、アップデートという形が取れず、リコールという対応をしなければならないため、発売には厳重なバグチェックが必要となります。1万円程度の「ギリギリ損してもいい値段」であれば放置してもさほど問題なかったかもしれませんが、今回は20万円という大金ですから、リコールの対応が行なわれなかったことが信じられません(解決策が分かればですが)。WEAR SPACEは3万円で誠実にリコールで修復をしていましたしね。

また、VAQSOは発売前に試していた環境が非常に限られていたと予想され、バグを十分に洗い出せていなかったのではないかと思います。
WEAR SPACEと違い、完成する前に発売しているため、これに関しては発売延期を行うべきだったでしょう。速度が大事と言っていたさっきとは矛盾していますが。




我々はどうすればいいのか

上記のことから、我々がスタートアップする場合には次のことに気を付ければよいと考えます。

ハードウェアシステムの特性上、バグが生じるとリコールをしなければならないため、発表前は慎重に行くべきだと思います。つまり、製品がほぼ完成してからクラウドファンディングを行なうべきです。あと、販売側の誠実さが全く見えず、逃げずにバグ取りを続けていただけでもかなり違ったのではないでしょうか。

結局、いろんな人が簡単に行うように見えるハードウェアスタートアップですが、高い技術力が必要な分野でもあります。つまり、技術力が無い人が1から学んで始めることは、そもそもしないほうがいいでしょう。


色々悪口を言った気もしますが、良かった点としては ↓ の点があります。

  • バイスのアイデアが良く、今後の嗅覚デバイスの形状のベースとなる可能性があった
  • どの出力から匂いが出ているかを、自動でLEDに視覚的に表示している




まとめに

最終的に、我々がスタートアップする際にすべきことをまとめると、 ↓ のことが重要だと考えられます。重要なのは、クラウドファンディングでは製品のクオリティを求めているのでなく、「アイデア」とその時に「提示された機能」であることを意識することです。

  • 様々な環境で慎重にバグ取りを行う
  • バグがなくなったタイミングでクラウドファンディングを始める
  • クラウドファンディングで資金が集まれば、できるだけ期日通りに販売を行なう
  • 完成が遅れる場合、定期的に詳細な報告を行なう
  • 待たせるなら時代に合わせて搭載機能を最新化
  • 販売後のエラーはリコールという正直な対応を貫き通す
  • 使う人が専門知識を必要としないように
  • 夜逃げしない!


おわりに

Advent Calendarの「Make」カレンダーに登録した当初は、なんでもよくわからないものを作って紹介する場だと感じ違いしていたのですが、どうやらMake系イベントのレポートが多いようでした。ただ、私は2019年にMaker Faire Kyotoに参加したことがあるだけで大したことが書けないと判断しましたので、ガジェット好きとしてちょっと違った視点から記事にまとめてみました。



こういうスタートアップを見ていると自分でもできそうな気もするし、逆に失敗してもなんとでもなりそうという気もしてきますね。

自分もスタートアップしてみようかなぁ。