机上の空論主義者

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ITエンジニアの休日の過ごし方に、「プロボノ」という道があることを広めたい

こんにちは、ume-boshiです。

皆さんは休日には勉強をする派ですか?
最近、巷では「ITエンジニアが休日に勉強をすべきかそうでないか」の論争があったようですね。多くの意識高い系ITエンジニアは、休日に勉強をするべきであると主張し、なんなら、無意識に勉強できない人はITエンジニアに向かないという極論まで出てくるくらいです。(それだけ勉強しているITヲタクがいたなら全部先に実装してくれるから、もっと仕事が楽になるはずなんだけどなぁ……?)

専門知識の研鑽が大事なことは否定しません。休日の全ての時間を、ゲームをしてダラダラと過ごしている人に対して怠惰で無駄があるように見えるとも思います。
ただ、凡人が大事な休日を費やして興味のない知識を着けたところで、何がしたくて何を目指してるんだろうか?と疑問に感じます。日頃の業務をこなせていれば技術の勉強に意義を感じないでしょうし、苦しい思いをして休日にも心身を削るくらいならば遊んで健康に過ごせるうほうが良いですしね。

じゃあ、どうすればいいのか。本題に入りましょう。

新しい1つの選択肢「プロボノ」とは?

私が導き出した1つの答えが、NPO団体でプロボノをすることです。
まずはプロボノについて紹介していきましょう。

プロボノとはラテン語で「公共善のために」を意味する pro bono publico の略 (参考 : wiki)

であり、簡単に言うと社会人が専門知識を活かして行う一種のボランティアの形です。 プロボノの特徴としては、既に収入がある社会人が無給でボランティアすることで、人件費を抑えて軍資金を支援対象にダイレクトに費やすことができます。 また、専門知識・技術を持つ人が集まり課題解決を図ることで、企業内のように協力し合いながら効率的に力を発揮できるといったメリットもある活動方針といったところでしょうか。

それに対して一般的なNPO団体は、会社のように就職のような形でメンバを募集する方式がよくとられています(NPO法人とも呼びますしね)。つまり、どっぷりと活動するためのハードルがかなり高い仕組みになっています。
それ以外の支援方法として募金や寄付がありますが、お金に余裕がないとサポートできないうえに、募金には気軽に払えるとは言えない最低額が決まっていることもしばしば。 さらには、お金で問題解決を図ろうとする人を「偽善者」だと批判するダサい風潮があるため、募金活動をしたことは胸を張っていられるような状況にない悲しい国でもあります。

そんな中で、NPO団体のメンバとして密に関わることができ、専門知識を活かして無償で活動することで社会貢献できるプロボノは、日本の支援団体にとってマッチした方式だと言えそうですね。
// 通勤時間や働くことが大好きなのに、働き方改革で働けなくなった典型的日本人を救済できる措置でもありますね。

左:よくイメージする関わり方、右:プロボノの活動形態


ITエンジニアがプロボノをすると何が良いのか

それではここからは、ITエンジニアの休日としてプロボノを勧める理由を3つに分けて紹介していきます。紹介する3項目は、私が3か月近くプロボノとして活動した実体験からの意見となります。

IT技術の導入が進んでおらず、発言力がある

これは場所によるかもしれないですが、基本的にNPO団体へのIT技術の導入は遅れていると考えてよいでしょう。そして、プロボノの活動は時間が限られていることから、作業を効率化することが重要となってきます。

つまり、そこに入ってくるITエンジニアが貴重であることは想像に難くないでしょう。
作業を自動化・効率化するためのシステム設計や実装ができたり、組織運用で使えるツールの導入検討などは専門知識を持つ人が率先して進めてほしいものです。

つまりNPO団体では、専門家としてIT関連の強い権限と発言力を持つことになるでしょう。つまり、「どんな問題を解決」し「どんなシステムを導入するか」を計画するところから取り組む経験ができます。

ただし少し注意点になりますが、
・プロボノという立場上、新人教育に費やすリソースはほぼ無いため、即戦力の有識者として誤った判断をしないだけの能力が要ります
・団体内で実装をお願いされたシステム開発では、仕様変更があることもあります。

視野が広がる

団体そのもののの活動を通して、その活動対象への知識が広がるのはもちろん、IT関連の視野も少し広がることとなります。
その最たるものが、俗人化を避けるシステムの知見が身につくことでした。

研究や業務で実装するコードは、基本的には自分自身か、他の同等レベルのITの専門知識を持つ人が読めれば及第点となります。 ところがプロボノでは、社会人との兼務である以上は生活環境の変化で辞めていく人が少なくありません。つまり、どのようなシステムがどんな構成で動いているか把握できる人材が1人もいなくなるという状況があり得るのです。
また、プロボノとしてシステム管理に関わる人は、企業の面接を潜り抜けてきた人材ではないため専門が偏っていたりと、能力にばらつきがある可能性があります。

そんな中で、実装者自身の能力だけに依存して作られた、ナウい言語でシステムを実装し、IaaS環境にCICDまでばっちり構築されていたとしても、保守運用できなかったら全く使われなくなるのです。ITエンジニアがいなくなっても、ちょっとした情報強者ならばできるだけ保守運用できるような設計になっている必要があります。

私の所属する団体では、Googleとの連携がしやすく比較的簡単に記述・読解できるローコードな環境でたシステム構築するようにしています。個人開発レベルのものでも、仕様書を残すようにしています。権限付与まわりの意識も、IT系とそうでない人の間では認識が違うため外部共有のルールを明文化したりしています。年配の方もいらっしゃるため、利用するツールの量は多くなりすぎないようにしつつ、全員が必要な情報にアクセスできる状態にもしています。
(まあ、これらの取り決めはすべて先代がしてくれたのですが)
参考までに。

別業界の専門家と活動できる刺激

今まで3か月活動して、出会った業界人には「IT」「コンサル」「弁護士」「広告」「金融」「メーカー」「医療」など多岐に渡りました。ここまで多様な業界の人が一堂になって活動する場は、社会人になってもあまり無いのではないでしょうか?
業務時よりも近い距離で別業界の優秀な人と関われるのは、プロボノで活動する上での大きなメリットになると考えられます。

やはりコンサル系の人は根本を詰める人が多いですし、法律的に問題があるかどうかについて早期に気づくことができますし、色々と業界ごとに特徴があることが結構面白いです。
また、業界だけでなく大学の出身や境遇、経験談なども個性的なところがあり、私自身もっと交流を深めたいと思える環境です。

ただ、どのメンバも目指すところは団体と同じ方向にあり、皆が目標の達成のために努力して交流していることがよく伝わってきます。慈善活動をするために集まっているだけあって、どうあがいても自分よりも努力家で真剣で優しい人ばかりが集まるようです。


「プロボノ」はどんなITエンジニアに向いている?

おさらい

まず、ITエンジニアがプロボノとして需要がある理由をまとめておきましょう。

ITエンジニアがプロボノで需要がある理由

思い当たる条件

ここまでの内容から、どんな人(ITエンジニア)にプロボノが向いているか、私なりの条件を挙げておきます。

  • 前提として 団体の活動内容に共感し、活動意欲がある。社会貢献したい!
  • リモートワークや働き方改革でプライベートな時間が増えたが、暇や能力を持て余している
  • システム開発の方法として新しい視野を取り入れたい
  • 団体内で専門家としての発言力や決定権を持ちたい(邪魔はよくない)
  • 別のコミュニティに属し、多様なバックグラウンドを持つ人と交流したい

注意したいこと

プロボノの活動を広めたい思いがある一方、活動を続けるには注意すべきことが2点あります。

距離感

まず1つ目に、距離感を大事にすることです。
ITエンジニアは根本的にコミュニケーションが苦手であることや、文系出身のメンバの多く団体に所属していることから 、普段の会社では通じる会話が全く通用しない可能性あります。そしてプロボノは無給ながら義務感を原動力にしている点から、人が辞めやすい環境ともいえます。人が辞めると活動が困難になりうるため人間関係の安定性が大事であり、ハラスメントに該当する発言は絶対的に避けて通るべきです。ともかく、人間関係で深入りしすぎると面倒なことになる事例もあるみたいです。

また、プロボノになる目的はあくまで社会貢献が軸としてあるため、それに悪影響をもたらすような行動は避けなければなりません。NPO団体でのITエンジニアは「システムに関する発言力や決定権を持てる」とメリットとして述べましたが、権限を持ちたいからプロボノをするというのはお門違いです。

活動量

2つ目に、活動量をはじめから意識しておくことです。

それまで仕事とプライベートな時間だけで「公私」に分けられていた生活が、プロボノを始めることで「公公私」という状態になります。
そうなると、当然のように肉体的・精神的疲労が溜まりやすくなります。自身の状態管理が得意な人は、「公公私」の状態になっても無意識的にペース配分できるのでしょう。
しかし慣れていない人は、プロボノとして長く活動できるように距離をとり、入会したての頃はバランスを保てる活動量を意識することが大事です。

そんなことを言っている私ですが、7月あたりに①仕事と②プロボノと③修士時代の論文執筆を同時並行で行い、「公公公私」の状態で活動していました。そのときは些細なことで精神的に弱りましたし、睡眠を削って生活をせざるを得ませんでした。こうなると、どの活動も満足に達成できず周りに迷惑をかける状態になってしまい、それによりまた精神を蝕むことになる負のループに陥るので注意です。

活動量のイメージ

おわりに

ここまで読んでみて、「自分にマッチしている!」と思った方には、ぜひともプロボノでの活動を視野に入れてみてほしいです。
優秀だけど毎日ゲーム三昧なITエンジニアが本気を出して、プロボノを介して世に貢献してくれるといいなぁと思います。



ちなみにITエンジニアは休日に勉強すべきという問題に対し、僕はどんなに元気でも勉強せずに寝だめをしちゃうタイプです。勉強はしようと思ってるんですけれど、本を開いたその瞬間には気を失っているんですよね。
どうやら、神様は僕がITヲタクになることを拒んでいるようです。

仕方ない。甘んじて受け入れましょう。